ヒートの08-09シーズンを振り返る


レイオフ1回戦、第7戦までもつれたヒート対ホークスの対戦は、最終戦に勝利したホークスが2回戦進出を決めました。レブロンとウェイドのプレイオフでの対戦を見たかったんですが……残念です。一時はホームコートアドバンテージを奪ったヒートでしたが、ホームでの第4戦を落としたのが痛かったですね。両チームともに死力を尽くした戦いでしたが、最後はホークスの方が一枚上手でした。


レイオフ敗退が決まったヒートですが、今季の戦いぶりは見事だったと言っていいでしょう。15勝67敗というフランチャイズ史上最低の成績に沈んだ昨季から、28勝を上積みして43勝39敗でレギュラーシーズンを終え、プレイオフでも最終戦までもつれる激闘を演じました。低迷を乗り越えてのチームの躍進は、ファンとしても誇らしく思います。


今季のヒートの躍進は、故障を乗り越えて復活したドウェイン・ウェイドの活躍なくしてはあり得ませんでした。昨季は怪我に苦しみ31試合に欠場したウェイドでしたが、今季はシーズン終盤の2試合を休養のために欠場した以外は全試合に出場、平均30.2得点、5.0リバウンド、7.5アシスト、2.2スティール、1.3ブロック(リバウンド以外はすべてキャリアハイ)という獅子奮迅の大活躍を見せ、初の得点王に輝きました。彼のハイライトシーンは多すぎて、印象的なシーンを選ぶのも苦労するほどですが、個人的に最も印象に残っているのは、2月28日のニックス戦と3月9日のブルズ戦です。ニックス戦では、第4Qだけで24得点、合計46得点の大爆発で大逆転勝利に貢献。ブルズ戦では、ダブルオーバータイムにもつれた試合の終了直前、同点の場面で相手ボールをスティールし、走りながら放ったスリーポイントシュートが決勝ブザービーターとなりました。


また、ウェイドの華々しい活躍の影に隠れがちですが、今季からパット・ライリーの後を引き継いだエリック・スポールストラHCの好采配も光りました。今季のヒートの開幕時のスターターは、マリオ・チャルマース、ドウェイン・ウェイドショーン・マリオン、マイケル・ビーズリー、ユドニス・ハズレムの5人。ビーズリーを起用するためにハズレムをセンターに回したスモールラインアップでしたが、うまく機能しないとみるや、スポールストラはすぐにビーズリーをスターターからはずし、ジョエル・アンソニーを先発センターに起用しました。この布陣変更により、インサイドのサイズ不足やビーズリーのデェフェンス面での苦戦から不安定な戦いが続いていたヒートの成績は安定しました。トレードでマリオンがチームを去った際にも、ビーズリーをSFとして先発出場させることはせず、ヤコバ・ディアワラとジャマリオ・ムーンを先発SFとして併用したことで、ディフェンスの中心選手だったマリオンの抜けた穴を感じさせませんでした。また、シーズン序盤にはジェイムズ・ジョーンズの戦線離脱でシューター不足とみるや、シュートが好調だったクリス・クインにSG的な役割を任せたり、シーズン終盤にジョーンズが調子を上げてくるとプレイタイムを増やし、プレイオフでは先発で起用するなど、臨機応変な選手起用が随所に見られました。


チームも、現役最年少の新人HCの期待に応え、一丸となった戦いを見せてくれました。今季、チーム内部でのトラブルが皆無だったことは、ウェイドとハズレムの両キャプテンが若い選手達の精神的支柱としてチームを引っ張ったからにほかなりません。ウェイドが今季のチームMVPであることに疑いの余地はありませんが、コート内外でリーダーシップを発揮したハズレムの存在も忘れてはなりません。平均10.6得点、8.2リバウンド、FG成功率51.8%の成績を残したハズレムは、影のMVPと言っていいでしょう。


開幕前から注目を集めていた2人の有望ルーキーも、それぞれの持ち味を活かした活躍を見せてくれました。ドラフト2位指名でヒート入りしたマイケル・ビーズリーの今季の成績は、81試合に出場(うちスターターが19試合)し、平均24.8分のプレイタイムで13.9得点、5.4リバウンド、FG成功率47.2%。鳴り物入りで入団したことを考えると、数字上は少し物足りないと感じる人もいるでしょうが、約25分のプレイタイムでこの成績は立派です。ただし、ディフェンス面では苦戦が目立ち、ファールトラブルに陥ることもしばしばでした。オフェンス面では大器の片鱗を見せていますが、今後、チームの将来を背負って立つレベルの選手に成長するためには、ディフェンス面の改善が必要不可欠と言えるでしょう。


ドラフト2巡目34位指名でウルブズから指名され、ドラフト当日のトレードでヒート入りしたマリオ・チャルマースは、今季チームで唯一、全82試合に出場(しかもすべてスターター)し、ビーズリーを上回る平均32.0分のプレイタイムで、10.0得点、4.9アシスト、1.95スティールの成績を残しました。シーズン前のサマーリーグなどで高い評価を得ていたとはいえ、1年目でここまでの活躍を見せると予想した人は少なかったでしょう。特に、開幕直後に1試合9スティールのチーム新記録を樹立するなど、ディフェンス面での活躍が印象的でした。ドラフト2巡目指名権2つと交換で、ウルブズからチャルマースを獲得できたことは、ヒートにとっては幸運だったと言えます。ゲームメイクなどの面ではまだまだ課題もありますが、チームの不動の司令塔へと成長してほしいものです。


また、今季の印象的な出来事の一つとして、トレードデッドライン直前での大型トレードが挙げられます。シャック放出という衝撃的なニュースだった昨年ほどの驚きはありませんでしたが、ヒートにとっては大きな意味を持つ補強となりました。ジャーメイン・オニールのヒート加入後の成績は、27試合の出場で平均13.0得点、5.4リバウンド、2.0ブロック、FG成功率47.5%。リバウンドの数字は少々物足りないですが、センターを固定できたことはヒートにとって大きな収穫でした。来シーズンはチームのシステムに馴染む時間もありますし、数字を伸ばしてほしいところです。また、ジャマリオ・ムーンは26試合に出場、うち21試合でスターターを務め、平均7.1得点、4.5リバウンドの成績でした。マリオンの抜けた穴を感じさせない活躍を見せてくれましたが、今オフに制限付きFAとなるため、今後の動向が気になるところです。


ヒートの08-09シーズンは、ホークスの前に惜しくも敗退という形で幕を閉じましたが、チームにとってもファンにとっても誇れる1年だったと思います。選手達には、ありがとう、そしてお疲れさまと言いたいです。今はゆっくりと休んで、来るべき新たなシーズンに向けて英気を養ってほしいですね。


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